第五話

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第五話

 その言葉を呪文のように唱えたとたん、背中の重みがスッと消えた。  振り向くと、背中に乗っていたであろうヤツの姿はなかった。  これは……幻覚だったのだろうか。  それにしては本当に死ぬかと思った。あいつは実体を伴い、俺に襲いかかってきた。物理的に攻撃してくるなんて、まるで西洋の幽霊みたいじゃないか。  心臓の音も落ち着いてきて、辺りを見回す余裕が出てきた。  屋根裏部屋は奥の方にダンボールが積み上げられていたが、試しに一つ中を見てみたら、ただの本の山だった。巨藤魔日郎の蔵書だろう。  屋根の下にしては広く、俺が立っても頭がギリギリ(つか)えないほどの高さもある。面積は下の寝室と同じくらいか。家具と言えるものは、窓の下に置かれた小さな文机だけだった。その机にも何もない。  そして思った通り、家の正面側に一つだけ窓があった。  上げ下げ式というのか。大きさは横幅が五十センチあるかないか。もしかしたら大也はキツいかもしれないが、かろうじて身体を通すことはできそうだ。  窓を押し上げてみる。     
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