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「は、はじめまして。えっと、貴方がもう1人のわたし?」
「はい、そうです」
そう返事をするも、笑顔1つすら浮かべず、無表情のまま
私は、“育て方によって、善にも悪にもなる”という説明書を思い出しながら、もう1人の自分を育てることにした
幸い、言葉は喋れるし意味も教えればすぐに理解した
学校にも何回か通わせてみた。すると、先生たちの言葉も一言一句聞き逃すことはなかった
友達付き合いに関しては少し気になる点があったものの、何かわからないことがあれば「体調が悪いの」と言えばいいといったら、とくに困ることはなかった
「すごい!すごいよ!」
私は、もう1人の自分を褒めた
今日は古典の小テストがあったが、結果は満点だった
私は、まるで自分が満点をとれたように嬉しかった
「ありがとう。ゆかりが私をここまで育ててくれたお陰」
「なにいってんの!それは貴方の実力だって。だから素直に喜びなよ」
「うん、すごく嬉しい」
あれ?貴方の実力って言っちゃったけど、これは私なんだよね?
そう、私が満点をとったんだ
だから、彼女を褒める必要なんかない
だって、彼女は私が呼び出しただけの人物なんだから
「ねぇ、どうしたの?」
彼女が私の事を心配している
「なんでもない。明日、明日は数学の小テストがあるの。
だから明日も私の代わりに学校に行って」
「・・・うん、わかった。私、ゆかりのために頑張るわ」
「・・・・」
彼女は自分の意思を持つようになった
最初の頃は無表情で、クラスの人からも心配されるくらいだったのに
今では、本当に私みたい
完璧な私がいて嬉しいはずなのに、どうしてこんなにも心がざわつくの?
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