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プロローグ
あれは、まだ幼かった俺が親父の仕事にひっついて初めて地中から地上の世界へ出た時だった。
親父が仕事で王様と謁見している間、城の中庭に放置された俺は初めて見る花や不思議な生き物に夢中になって、右へ左へ駆けまわっていた。
しばらくそうしていると、ふと目の端にきれいな色が映った。最初は風に舞う花びらかと思っていたけど、俺の掌で包み込めそうなほど小さいそれは、よく見ると鮮やかな黄色に複雑な紋様の描かれた対の羽で、それを使って自由自在に飛んでいる。
もっと近くで見たくなって勢いよく駆け寄ると、その生き物は俺に気づいて逃げ出した。
見つけた宝物を逃すまいと俺も必死で追いかける。
だけど幼い子供の足ではいつまでたっても追いつけず、しばらくするときれいな生き物を見失った。
我に返ってあたりを見回すと、そこは人気のない寂れた場所だった。目の前の生き物しか眼中になかった俺はどこをどう通ったのかなんて覚えていない。
目の前に高い塔が一つ、聳えているだけだった。
いったいどうやって元居た場所まで変えればいいのか途方に暮れた。
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