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だけどもう走りすぎてへとへとだった。なので塔に寄りかかって疲れた体でも癒そうと思ったんだ。
そこで近づくと、すぐ横にドアがあることに気がついた。
高い塔に見合うようにどっしりと設えられたドアには意外にも鍵などはなく、俺がそっと押すと、ギ、ギ、ギ……と音を立てながらあっけなく開いた。
逆光で見えない先に、湧き上がる好奇心。
そっと顔を寄せ、中を見る。
薄暗い室内には階段があるだけだった。だが、その階段ははるか高いところまで螺旋状に伸
びている。その先に見える小さい光は屋上へと続いているのだろうか。
引き込まれるように中に入り、階段を上る。足が短いから手摺をもって内側を踏みしめるように進む。
だいぶ上ったところで上を見ても中々光は近くならない。どれほど来たのかと下を見ると、地上はすでに遠くて、俺は急に怖くなってそこから一気に上まで駆け上がった。
息も切れて、そろそろ体力の限界で足がもつれそうになるころにようやく頂上にたどり着いた。
光の中まで上りきると、現れた光景に息を呑んだ。
地中の中では決して見ることのできない、どこまでも突き抜けるような青さの空、霧深く豊かな森林、向こう岸の見えない紺碧の湖、そして悠々と噴煙を上げている巨大な火山。
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