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そんなことを考えながら重力に身を任せていると、ものすごい衝撃とともに体が空中で止まった。腕にかかる圧力に思わず眉をしかめる。
「間に合ったか」
不意に聞こえた低い声。
「ギリギリだったな」
見上げると塔の途中にいくつもあった明り取りの窓の一つが大きく破壊されていて、その中から護衛団の格好をした人がおれのうでを掴んでいた。
そして中へと引き上げられ、そのまま温かな懐に抱き込まれた。
「もう大丈夫だ。だから安心しろ」
労わるような優しい声音と更に強く抱きしめられた腕に、忘れていた呼吸を再開させる。だけどそれはうまくいかず、しゃくりあげる声が止まらない。
助かった安堵でとめどなく流れる俺の涙を指先でそっと拭いながら向けられた、柔らかな微笑み。その顔は滲む視界の中でも息を呑むほどに美しかった。
これが俺とザフィ教官の初めての出会いである。
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