夢の時間の終わり

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「初めての感情で、自分でもよくわかっていなかった。でも賢人に言われて、驚いた。俺は、そんなに顔に出ていたのかって。確かに、美羽ちゃんに会えない夏休みは、つまらないって感じていたけれど、自分では何も、変わっていないつもりだったんだ」 ──コントロールできない感情に、最初は戸惑ったけれど。認めて決断してしまえば、案外楽になった。夏休み明けに、告白した。『自分の事を知ってほしい』なんて告白の言葉が、弱腰だったと思うけど。 「拓夢さんの“初恋”、だったんですね」 思わず微笑んで言えば、拓夢さんの頬も微かに緩んだ。 「そうか……うん、俺の“初恋”、だったんだな。見事に、フラれたけどね」 「えっ!?」 まさかの事を言われて、大きな声が出た。 「一度はOKを貰って、舞い上がったけどね。受験生のくせに、二人でどこに行こうか?なんてそんな事ばかり考えていた。でも、浮かれていられた時間は、短かったよ。……美羽ちゃんにはずっと好きな人がいて、その人と俺が似ていたらしい。無意識のうちに、俺とその人を重ねて見てたって。本当に好きなのは、俺じゃなかったんだ。『ごめんなさい』て、あっさりフラれちゃったよ」 「・・・」 美羽さんの名前を、あんなに優しく呼んでいたのに。今は、せつなさが混じる。
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