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あっ、危なかった~!
私の動揺なんか、全く興味がないという涼しい顔でカップをソーサーに戻し、その人は口を開いた。
「あなたの話を最後まで聞けるかはわかりませんが。簡潔にわかりやすく、真実だけを話してください」
抑揚なく、それでいてきっぱりと言い切られたその言葉に、冷たい汗が再びタラリと背筋を流れる。
はっきり言えば勢いで、その人に声をかけてしまったから。どんな風に話そうかなんて、全く考えていなかった……
……きっと、私がどんなに頭を捻って考えても、その人を納得させられる言葉なんて出てきやしないはず……
その人の冷たく真っ直ぐな視線を受けながら、そう思った。
……それなら──
私はおしぼりをテーブルに置くと、眼鏡のブリッジをクイッと上げて、その人を正面から見つめた。
無表情に私を見ていたその人の片眉だけが、わずかに上がった。
スッと息を吸った。
「私のヴァージンをもらってください!」
その人を見つめたまま、大きすぎないが確実に届く声ではっきりと言った。
オリンピック陸上男子百メートル決勝のレースなら、間違いなくみんなゴールしている。
それぐらいの間はあった。
「はっっ!!??」
たっぷりとした間の後に、発せられたのはそれだけだった。
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