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その魔法使いが私に言ったのだ。
「夢の運び屋は、君の夢も運んでくれる」
「なにそれ」
「食べたら可哀そうだから、舐める。そうすると記憶はなくなり、君は夢を見る」
「……その世界に行く方法は?」
「君が条件を決めたらいい。僕は、そうだね。コンビニのおにぎりが廃棄処分になる時刻にしてる」
魔法使いは新商品を並べながら、笑う。
「馬鹿だね。夢なんて記憶から消してしまえば楽なんだよ」
私に20円割引のシールを張ったパンを渡してくれながら笑う。
だから私は夢を見る条件をつけた。
嫌いな人間に頬を叩かれた日。人間が嫌いだから猫になりたい。なので二時二十二分のにゃんにゃんにゃんの時間に私は猫になって、旅をする。
電車の中は、猫しかいない。私の決めたルールだから。
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