深夜二時二十二分。私は猫になりたかった。

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「前回みたいに、お腹が空いたからって青い蝶を捕まえて口に入れないでくださいね」 「だから前回っていつなの」 「さあ、まあ私の時間で言えば、一時間前」 「一時間前なら、私が頬を叩かれていた時じゃない。ウソツキね」  でも猫の運転手の手が冷たかったので、頭に被っていたマフラーを渡す。  すると、濡れていて冷たいと不服そうな声を漏らしたので笑ってしまった。 「さ。乗ってください。今日はお客様が多いんですよ」  猫の運転手は私に片手を差し出す。肉球が意外と固いことを知っていた私は、その手の上に手を乗せる。すると私は猫の耳が生えて、小さくくしゃみをすると丸い尻尾が生えた。  常識が面倒だとか、論理とか、科学的証明とか、現実とか、逆さまの世界とか、嘘とか本音とか、吐き気とか真っ赤なひまわりとか、涙が宝石になる人魚とか。  リアルとファンタジーが捩じれて繋がって、平らになった世界があるの。  その世界は現実で、その世界はファンタジー。  その世界が嘘つきで、その世界は本音。  雪の結晶と氷の結晶の羽をもつ青い蝶を育てた魔法使いが、人間世界でコンビニのアルバイトをしていた時に私が覗いてしまった平らの世界だ。
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