第4話 勝利

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俺たちに出くわして混乱している様子だったが、すぐさま退却する姿勢は見事だ。戦いにおいてそれはとても大事な事だ。奇襲を受け陣形が崩壊しているのに戦い続けても勝てる見込みなどない。退却をして陣を整えるのが定石だ。 そんな感じで考察をしているうちに俺たちと2人の距離はどんどん離れて行く。 「おい、いいのか?逃げちゃったぞ?」 「美波ちゃん言うんかあの娘!ええなぁ。ワイの好みどストライクや。堪らんなぁ。」 澤野がその爬虫類のような眼であの女の子の事を見ている。その姿は捕食対象を見つけた動物のようであった。 「おい、聞いてんのかよ。」 「聞いてる聞いてる。シンさんはせっかちやなぁ。まあ、見ててみぃ。」 澤野と話している間に2人は角を曲がってしまった。逃げられてしまってはこちらとしても分が悪くなるんじゃないだろうか。奇襲をかけられたのだからそのまま一気に勝負を決めた方がどれだけ楽であったかわからない。 ーーそんな事を考えていた時だった。 「えっ!?どうして!?」 俺たちの背後から逃げて行ったはずの美波と呼ばれている娘とオッさんの2人が現れた。美波からはその美しい瞳に驚きと恐怖が融合した絶望に近い眼差しを俺たちへ向けている。 俺もこの状況には驚いたが、これが澤野のスキルなのだろう。逃げて行った獲物を自分の元へ集める引力のようなものがコイツのスキルなのかもしれない。     
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