第一話 二人の出会い

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 私の言葉に、義父と母は驚いていた。それもそのはずだ。私は今まで、今の両親に逆らう事は一切してこなかった。人形のような存在だったからだ。両親の言葉に素直に頷き、両親に遊ばれるだけの肉の人形。それが突然、意思を持って敵意を隠さずに反抗してきたのだ。 「……別に、お義父さんが私にしてきた事を警察とかに言うつもりはありません。ただ、もう耐えられないだけ……!」  私が睨みつけると、義父は先ほどとは打って変わって情けない表情に豹変する。義父に力いっぱい体当たりをすると、バランスを崩して尻餅をついて倒れてしまう。その隙に、私は玄関前に駆け抜ける。  そして、外に出る間際、振り向き、家の中にいる二人に告げる。 「……もう死のうとかは思っていないから安心して。でも……、少しだけ一人にしてほしいの!」  そういうと、私は再び家を飛び出したのだった。  私はひたすら歩き続けた。少しでも早く、遠くへ、あの義父のいる場所から離れたかったのだ。    どのくらい歩いただろうか。気がつくと、私が通う学園の正門が見えてくる。普段は電車に乗って通っているのだが、知らず知らずにかなりの距離を歩いていたようだ。  今日は日曜なので学園はお休みなのだが、クラブ活動を行っている生徒の為、学園自体には入る事ができた。ちょうど制服を来ていた私は、一旦学園の中に入ることにした。……大丈夫だと思うが、仮に両親が追いかけてきても、学園の中であればおいそれと手は出せないだろう。     
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