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第二話 リペア・マインド
私は、その場で立ちすくんでいた。ベンチに座っている彼女から、目を離すことができなかった。黒く艶のある長い髪、ぱっつんとした前髪、そしてアンダーリムの眼鏡が目についた。駅で私が平手打ちをしてしまった際に、吹き飛ばしてしまった眼鏡のヒビは、彼女が掛けているアンダーリムの眼鏡には入っていなかった。
「……も、もしかしたら人違いかも……」
私は、当時もことを振り返る。絶望し線路に身を投げるもなぜか助かり、馬乗りされ胸をもまれていた。その時は頭が混乱していたため、どうしても彼女が当人だったと確証を得る事ができなかったのだ。
どうにかして、彼女に話しを聞くことができないだろうか。そんなことを考えてながら、彼女の様子をもう少しだけ伺うことにした。
「あっ……!」
一瞬だけど、彼女と目が合った気がした。私は、なぜか思わず目を逸らしてしまう。どうして、目をそらしてしまったのだろう。……なんとも、いたたまれない気持ちになってしまった。しかし、このままでは何も進展しないと思い、私は少し勇気を出して、再度彼女に視線を合わせることにした。
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