第二話 リペア・マインド

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 彼女は、ベンチに広げていた資料を丁寧にまとめ始めていた。どうやら、用事が済んで片付けをしている様子だった。私の事は気にも留めない様子に見えた。もしかしたら、目が合ったのも私の自意識過剰かもしれない。 「はぁ……」  そんな、ネガティブなことを考えてしまっていた。私のいままでの経験上、こういうネガティブ思考に入ると事が上手くいった試しがなかった。彼女のことは、また次の機会に話した方が良いかもしれない。  私はもう一度彼女を見ると彼女に背を向け、重い足取りで立ち去ることにした。 「ちょ、ちょっと! お待ちなさい!」  後ろからの突然の声に、私は背筋を伸ばす。少し高い女性の声が、中庭全体に響き渡る。驚いて私が振り向くと、先程までベンチに座っていた彼女は立ち上がり、少し怒った表情で私をじっと見つめていた。辺りを見回して、他に誰もいないことを確認する。 「……え……、もしかして私……?」  私は、右手の人差し指で自分を指しながら、彼女に確認をしてみた。 「あ、あなた以外に、ここには居ないじゃないですか! 折角、ベンチを座れるようにしたのですから、お座りになってはどうですか!?」     
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