第二話 リペア・マインド

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 なぜだろう、彼女はとても怒っているようだった。どうやら、目が合ったのは気のせいではなかったようだ。彼女は、私の座るスペースを空けるために、ベンチに広げていた資料を片付けていた……らしい。駅の時といい、見た目大人しそうな人だったが、もしかすると見た目とは裏腹に積極的に行動するタイプなのかもしれない。  私は、コクリと頷くと小走りで彼女の近くに近づいていく。隣で軽く会釈すると、少し間を開けて彼女の隣に座る。 「……」 「…………」 「………………」  沈黙――。  中庭に吹く風が、もうすぐ訪れる春の訪れを待つ木々を揺らし、カサカサと音を鳴らしている。いろいろ聞きたい事があるのだけれど、何から聞いていいのか頭の中が整理がまったくできていなかった。私は、膝の上に置いた手をもじもじとさせながら、何か言わないと! と思いながら考えを巡らせていた。 「私は、神之月 時名(かみのつき ときな)と申します。あなたはのお名前は?」 「……え……?」    突然、彼女が語りだした為、彼女と話そうと考えをまとめていた内容は全て吹き飛んでしまった。私はまたしても、呆然とし体を硬直させてしまう。 「名前です! 私はちゃんとに名乗ったのですから、あなたも名乗るのが礼儀ではないでしょうか!?」   「え!? あ!? うん! そ、そうだね! 私は理子。岬 理子っていうの。よ、よろしくお願いします……」 「ええ、宜しくお願い致します」  私の名前を聞いて、彼女は満足そうな表情をする。多少ツンツンしている感じではあったが、悪い人ではなさそうだ。     
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