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「あ、うん……。ああ、じゃなくて! 眼鏡の修理代は弁償するよ……。でも、今は持ち合わせがないから、後でもいいかな……」
私は申し訳なさそうにしながら、覗き込むように時名さんの様子を伺う。
「ええ、そうですね、出世払いで構いませんよ」
少し意地悪そな笑みを、時名さんは私に向けてくれた。
「………………」
なんだろう……。何か、私自身がいままで感じたことのない、何か新しい感情が芽生えた気がした。どこか恥ずかしいけど嫌な感じじゃない……。背中をくすぐられるような、こそばゆい気持ちだ。
そんな、私は駅の出来事をゆっくりと思い出す。
「……白パンツ……」
突然、あの時の衝撃の映像が私の目の前に蘇ると、私はうっかりその言葉を口に出してしまった。
「はい?」
「あ――! あ――! あ――! 何でもない! ナンデモナイヨ! 時名さん!」
私は、その場で立ち上がり両手を振り誤魔化そうとする。時名さんは、そんな動揺した私の姿を見て、キョトンとした表情をしていた。
「え、ええ……、よくわかりませんが、わかりました」
上手く誤魔化せたのだろうか、時名さんがこの件で追求してくることは無かった。私は顔を真っ赤にしつつ、ベンチに座ると何回か深呼吸をする。時名さんは、そんな私の姿を見て私が落ち着くのを待ってくれているようだった。
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