第二話 リペア・マインド

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 再度の沈黙――。ただ、先程の沈黙とは違い、心地よい沈黙だった――。  暫くして、私は落ち着きを取り戻した。さっそく、私は時名さんに聞きたいことを話し出した。 「……あの、駅で私に何をしたの?」  どうやって話を切り出そうか? いろいろ考えてみたが、良い案が思いつかず、結局、直球で疑問を投げつけることにした。線路に飛び降りる直前から、白パンツを見るまでの記憶が、どうしても曖昧だったのだ。それに、あれ以降、絶望という黒く深い靄が心にかかることはなかった。昨日までの私とは、別人といっても良いだろう。  そして、その原因を作ってくれたのが時名さんであると、確証はないが確信は持っていた。 「ええ、私は、あなたの壊れた心を、あの時、修復しました」 「……え!?」  心を……修復……?  私は、時名さんの顔をじっと見つめる。その表情から、冗談を言っている様子では無かった。  それに……これは、私自身が体験したからだ。 【コワレタココロヲシュウフクスル】という言葉に共感することが出来る体験を――。   「…………」  どう返答して良いかわからず、私はダンマリしてしまう。 「クス……。理子は信じますか? 心を修復するなんて、こんな話?」     
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