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「だから、私も極力この力は使わないようにしているわ。今の世の中、平穏に生きるために。それに、心が壊れている人は今の世の中大勢いるのよ。そんな人たちを全て救おうとするほど、私は強欲な神様ではないし……」
彼女は寂しそうな表情で、語っていく。
「じゃ、じゃあ、どうして私を……、私の心を直してくれたの?」
私は、率直な疑問を彼女に問いかける。
「……え!?」
突然の私の質問に、時名さんは驚いた表情をする。そして、目を瞑り何かを考えているようだった。私は、時名さんの横顔をじっと見つめ、その答えが出るのを待つことにした。
「そうね、理由は……」
「……り……、理由は?」
私は、喉を鳴らし、彼女の答えを今か今かと待つ。
「……ごめんなさい。思いつかなかったわ」
「え!?」
「そうね、理子を救った理由は、後で理子が納得できる回答を考えておくわ。それで良いかしら?」
「あっ、うん……」
話の流れでつい「うん」と返事をしてしまったものの、まったく期待した答えではなかったのだ。どんな理由か気になってしかたが無かったが、無理に聞いても今はきっと応えてくれないと思い、いつか、時名さんが話してくれるのを待つことにした。
「……あ! そういえば、私が線路に落ちる時、誰かが引っ張りあげてくれたと思うんだけど、時名さん、その人のこと覚えている?」
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