第三章 私と彼女のカレーライス

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「……そうですか。それでは少しお待ち下さいな」    すると、時名さんは立ち止まると、私の右手を離しスマートフォンを鞄から取り出し何かを調べ始めた。私は、時名さんが何かを調べるのを待ちつつ、右手をわしわしする。 「……はぁ……」  少しばかりのため息。いざ、手が離されると、何か物足りなさを感じてしまう。先程までは、あれだけ恥ずかしと思っていたのに……。私はなんて身勝手なんだろう……、と少しばかり自己嫌悪してしまっていた。 「そうですね、今日はカレーライスにしましょう! 宜しいですか? 理子?」  どうやら、時名さんは今晩の献立を調べてくれていたようだった。結構長い時間スマートフォンで調べていたけど、いろいろ悩んでくれていたのだろう。 「あ、うん、カレーライスか……。うん、いいかも!」    そういえば、家で食べていたカレーライスは、殆どレトルト食品のものだった。手作りのカレーライスなんて、何年ぶりだろう。私は、自分の記憶を深く深く探り出す。はっきりとは、思い出すことはできなかった。でも遠い昔、本当の父と作ったカレーライスの事を思い出し、少し心が温かくなった。     
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