第三章 私と彼女のカレーライス

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 若干不安だったので、パックのご飯を三個程買い物カゴに入れる。パックのお米なら保存も効くし、余っても困らないだろう。カレールーは、時名さんの好きなものを選んで貰うことにした。ちゃんとにカレーと記載されているものを買ってほしいと念を押しておいたので、別の食べ物になることはないだろう。  こうして、すべての食材を買い物カゴに入れると、私たちはレジへ向かった。もう夕方になっており、レジは少し混雑していた。二人一緒だと狭いので、私は、時名さんがレジを済ませるのをカウンターの前で待つことにした。  時名さんを眺めると、レジに少し緊張している様子だった。もしかすると、時名さんは余りこういった場所で買い物はしないのかな? いつもは、どんな食事をしているのだろう? 他には、どんなお店に行くのだろう?  ……そう、なにもかも新鮮だった。  買い物がこんなに楽しいなんて、いままで忘れていた気がした。ただ言われた物を買うだけ。余計なことはしない。そんな生活がずっと続いていたから。  私は、両手を組むと自分をギュッと抱きしめる。嬉しい。すごく嬉しい。 「こんな時間が、続くといいな……」  言葉にして思う。そう思わずにはいられなかった。 「……? どうしました? 理子?」  会計済のカゴを持ってきた時名さんが私に尋ねる。 「ううん、何でもない。じゃあ、カゴのなかの食材を袋に入れて行こうか?」 「ええ、そうね」     
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