第三章 私と彼女のカレーライス

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 私たちは、カゴの中の食材をスーパーの袋に詰めていく。時折、私たちの手と手は軽く合わさる。ああ、これは初めての共同作業かな。なんて、そんな恥ずかしい事を、私は食材を袋に入れながら考えていた。  そして、私たちは一つずつ、スーパーの袋を持ち外に出る。辺りはスーパーに入ったときに比べ、ずいぶんと薄暗くなっていた。気温も下がってきて、少し寒くなってきている。 「うう……まだまだ寒いね」 「そうですね。でも、もうすぐ春ですし、もう少しの我慢ですわ。それでは早く家に帰りましょう。あと20分程で到着しますわ」 「うん」  私は、時名さんの家に着く間、昔作ったカレーライスの作り方の話をすることにした。大丈夫だと信じたかったけど、ちゃんとしたカレーライスが食べたかったので念のため。時名さんは、私の話を嬉しそうにしつつも、復唱しながら聞いてくれていた。 *****  20分ほど歩いていくと、山の方に近づいているのか、少し寂しい情景になってきた。家も疎らになってきて、空き地らしき場所が多くなってきた。そんな中、目の前に一際目立つ家が現れる。  私の住んでいるアパートよりも、少し小さいくらいの家だろうか。周りの建物よりも、新しめの洋風の建物は少し可愛らしい外見に思えた。そして、辺りの自然とのコントラストが、意外にも合っている感じがした。     
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