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こちらは、旅行に行くのだろうか? 大きなトランクを脇に置いて、イヤホンを耳にあて音楽を聞いている青年がいた。
それは、以前テレビで見た都会の通勤ラッシュとは程遠い、田舎の平穏な駅の風景だった。
空を見上げると、そこには雲一つない青空が広がっている。正午前ということもあり、輝く太陽の日差しがいつもよりも強く感じた。
そんな風景を見て、私は思う。ここにいる誰もが、この風景と同様に平穏で幸せな生活を送っているのではないだろうか。
そう、私以外は――。
私は、大きく息を吸い、ゆっくりと吐いた。しかし、私を包む、どす黒い靄のような感覚は取れることはなかった。
ああ、私もこの空のように、青く透き通りたい。もう、嫌な事、辛い事は思い出したくない。
……だから、私は最後の一歩を踏み出そうと決心をする。
ホームの中央あたりで、私はそれがくるのを待っていた。
しばらくすると、低い振動音が遠くから聞こえてくる。その音は徐々に大きくなっていき、空気の震えが大きくなっていくのも肌で感じることができた。
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