第一話 二人の出会い

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 もうすぐ、このホームに止まるであろう電車が近づいて来ているのだ。私の足は、その振動の大きさに共鳴するかのように、ゆっくり前に進み始める。この足は、もう止まらない。このまま前に進めば、これからは何の苦痛も悩みもしなくて良いのだから、止まる理由はないハズだ。私は、そのまま線路に足を向け進んでいく。 「……あっ……!」  その途中、私の肩が何かに当たると、か細い悲鳴が聞こえ誰かが倒れる音が聞こえた。顔を向けると、そこには黒い髪をした私より少しだけり大きな制服を着た女性が倒れていた。 「ご、ごめんなさい……」  私は、倒れた女性に深く頭を下げ弱々しい声で謝罪する。  ……そして、私の足は再び前に進み始めた。低い振動音は、更に大きくなっていく。足からも、振動次第に大きくなってくるのを感じることができた。  そして、駅内全体に若い駅員のアナウンスが聞こえてくる。 「黄色い線の内側までお下がり下さい――」  アナウンスが流れても、私の足は止まらない。黄色い線を跨ぎ進んでいく。私の行動に気が付いたのか、誰かの呼びかける大きな声が聞こえてくる。  さらに、耳に響き渡る大きな警笛音――。  それでも、それでも、私の足は止まること無く進んでいく??。  大丈夫……、一瞬の痛みだけ我慢すればいい。そうすれば、これから続くであろう痛みや苦しみから開放されるのだから。    そして、遂に、私の右足が空を切る。     
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