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時名さんは、そんな私の心情を知ってか知らずか、気持ちよさそうに湯船に浸かっている。私は出来るだけ平静を装おうとするが、体の火照りと心臓の鼓動はまったく収まりそうになかった。むしろ、どんどん酷くなっているように思えた。
「……ふぅ……」
しばらくすると、頭に白い靄がかかったような気持ちの良い気分になっていく。
「……あ、あれ……?」
そんなことを思いつつ、そのまま私の意識は、白い湯気の世界に浸透されていったのだった。
*****
「……ん……」
体にあたる風が涼しくて気持ちいい――。そんな事を感じながら、私の意識は白い世界からゆっくりと覚醒していく。
「だ、大丈夫ですか?」
私の目には、バスタオルで体を包んだ時名さんの上半身が浮かび上がってくる。
「あ、あれ? わ、私……」
虚ろな頭で、何があったか思い出そうとする。
「……あ……」
どうやらお風呂で上せてしまったようだった。
「ご、ごめんにゃ、時名しゃん。めいわくかけにゃった」
覚醒したばかりで、まだ呂律が回らない状態の私の口に、時名さんは人差し指を充てる。
「いえ、大丈夫です。でも、少しの間、大人しくしていてくださいね」
「う、うん、ありにゃと……」
こうして私は、時名さんの膝枕の上で意識と体が回復するまで介抱されるのだった。本当に天にも昇るような幸せな時間だった。
*****
着替え終わった私は、リビングに入ると再びソファーに顔を埋めて悶絶する。
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