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その刹那、私は線路側に倒れるようにふわりと落ちていく。警笛音は、鼓膜が破れそうな程に大きく聞こえ、強い風と電車が迫ってくる圧迫感を肌で感じた。
私は、一瞬の激痛に耐えようと唇を噛み締める。
「……痛っ!!」
左肩と左手首に、いままで感じたことのない激痛が走る。体は重力に逆らうように舞い上がった。ふわふわと宙を舞うような感覚、その直後、鈍く痛々しい音が聞こえると共に、全身に激痛が巡っていった。
「!! がぁはぁ!!!!」
声にならない声を私は叫ぶ。口をパクパクさせるが、呼吸をすることもままならない。目の前は真っ白にになる。
電車に轢かれた……、というよりは、まるで、コンクリートの壁に全身を打ち付けたような衝撃だった。しかし、予想していた痛みとは違っていた。もっと一瞬で、もっと強烈な激痛を想定していたからだ。今の衝撃でも、十分痛かったが、頑張れば耐えることのできる痛みだった。
もしかすると、既に体は電車にボロボロにされて、触覚が既に麻痺している状態なのかもしれない。
そんなことを頭の中で思っていると、誰かが私の腹部に乗りかかってきた。信じられないことに、今の私に馬乗りしようとしているのだ。
「――――!!」
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