第一話 二人の出会い

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 そんな状況を認識した途端、私の顔は一瞬に火照ってしまった。左手は何故か激痛が走り動かせなかった。だから私は、馬乗りしている人物に躊躇なく右手を振るった。 「わ、私の胸を揉むな! この痴漢!!」  甲高い乾いた音が鳴り響くと、馬乗りしている人物の顔に、右手の平手は見事に命中する。相手の顔は思いっきり横にブレ、その衝撃でその人物が掛けていたと思われる眼鏡は、かなり遠くに飛んでいった。 「い、痛い!」  それと同時に、左肩にも激痛が走る。私は左肩を右手で押さえる。どうやら、私の左肩は外れてしまっているようだった。 「くぅぅ……!」  その激痛で、私はその場で悶絶する。そんな私にはお構いなしに、馬乗りになっていた人物は、頬を左手で抑えると、私の体を跨いで目の前で立ち上がった。……そこには、私が想像すらしていなかったものが、目の前に見えていたのだ。 「……白パンツ……」  痴漢だと思い力いっぱい平手打ちした人物は、先程私とぶつかった女性だったからだ。その女性は、私の正面から離れると、先程飛んでいった眼鏡を取りに離れていく。私は、その様子を呆然と見つめ続けていた。女性は眼鏡を拾い上げ、少しムッとした表情の後、眼鏡を顔に掛ける。     
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