夜空になった彼岸花 (様々な詩をご紹介します)

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「水葬」 梟は哀しみの伴奏を奏で 風は悪戯にドレスを広げ 暗闇のダンスを踊っていた 湖のほとりにある満開の桜は 呻き声に似た低音に合わせ 揺れて ただ揺れて 私は散る 導いてくれた月は もう私を見守ることを諦め 白鳥がいた湖は幻だったと 花びら達は囁きあう あの人の熱い視線を忘れる前に どんな泳ぎも覚えなくて良かった 私は忘れる 太陽に手を伸ばそうとした肌は 無残にも焼け焦げ 気の遠くなりそうな深夜の悲鳴は まるで捨て猫のよう 枕を涙でいくら濡らしても 小さな未来でさえ 手に掴むことさえできずに 私は眠る 靡く髪を抑え 湖のほとりへ歩いた 月明かりに照らされた水面には 時折魚が跳ねていた 何処かで何かが失われても また何処かで何かが生まれるのだと 気づく ただ気づいて 私は最期の力を振り絞る 美しいだけの夜空の隅々まで 貴方の瞳と太陽を探していた でもそこにあったのは 三つの思い出と愛の欠片 いつか 再び貴方と出逢う奇跡を夢見ながら 生まれ変わる来世に想いを飛ばし 私は眠る 桜の花びらの中で揺れ 葬る ただ葬られる
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