夜空になった彼岸花 (様々な詩をご紹介します)

5/17
前へ
/17ページ
次へ
「ある小さな村の老人」 ジェスマイヤーは其処に居た ジェスマイヤーは其処に居た 手垢だらけのガラスの額縁 金髪の少女と少年の微笑み 眺めながら其処に居た 煙突のある小さな家で鶏の声を聴き 曲がった腰で雑草を抜き 山羊のミルクを温める 星空が見えるとランプを付け 顎鬚を何度も優しく触り チェロの弓さえもう持てず それでもメロディ口づさみ 虫の声と弦を合わせ ジェスマイヤーは静かに笑った ジェスマイヤーは小さく頷き ジェスマイヤーは最後の音符を胸に描いた 幼馴染のあの女(ひと)へ 天へ向かって楽譜を投げる ジェスマイヤーは星になった ジェスマイヤーは其処に居た 永遠に終わりのない音楽に全てを注ぎ 金髪の少女と一緒に ジェスマイヤーは其処に居た ジェスマイヤーは静かに笑った
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加