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「あー……」
レントくんは思い出したように私を掴んでいた手を離して、制服のポケットから眼鏡を取り出した。
一度は接着剤でくっつけであろう眼鏡のツルは今さっきの喧嘩の影響か二つに割れてしまっていた。
「ワリィ。また壊れた」
「いや、直ってなかったでしょ」
壊れた眼鏡を前に二人でクスクスと笑った。
ふいにレントくんが何かを思いついたように、眼鏡を広げて私の顔へとかけた。
眼鏡をかけてくれようとしていると分かったから、避けたりしなかったけれど、眼鏡のツルを持ってるレントくんの指先が、思いっきり私のこめかみあたりに当たっている。
やっぱり冷たい指先。それに反して私の方は触られた部分から熱が広がってくような気がした。
「ホラな」
「え?」
「ホラ、似合わねえ」
レントくんが笑ってまた少し心拍がズレた気がした。
その言葉には、喜んでいいのか悲しんでいいのか分からない。
見つめられていることが恥ずかしくて私は視線を路地へと落とした。
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