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「ねえ、三春くん」
「何、柿崎さん」
「私、眼鏡やめたんだよ」
「……知ってるけど、何」
テストまで残り一週間を切っているから、塾の空き時間も皆必死で勉強してるのに、三春くんはマイペースにテスト範囲外の塾の課題を解いている。
その余裕が悔しくて、私は空き時間中に席を移動し、珍しく三春くんの隣の席を陣取っていた。
「眼鏡さ……、もうなくても大丈夫だと思う?」
「何が?」
三春くんは課題を解く手を止めないものの、私の雑談に付き合ってくれるようだ。
話を聞きながら問題を解けるなんて、三春くんてば脳みそいくつ持ってるんだろう?
「目つき、とか」
「目つき? どういうこと?」
私の言葉に三春くんは今度は手を止めて、怪訝そうな表情で私へと視線を向けた。
クッと目を細める仕草は、視力が悪い人独特のもので、三春くんは私みたいにポーズで眼鏡をかけてるんじゃなくて、本当に視力が悪いのだと私は知った。
「ほら、私ってつり目じゃない?」
「つり目……? そうかな」
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