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住宅地を抜けバス停が近付いて来ると、
すぐに黒っぽい制服の群が見えた。
同じ中等部の仲間達と
三年間過ごして来た群に
違う世界から一人混ざって
学校生活を送るのは正直キツイ……。
不安の揺り返しがユヅキを襲う。
今、ユヅキにとって唯一の仲間は
黒犬のイチゴだけだ。
出がけにユヅキを見上げていたイチゴの顔を思い返す。
バス停に辿り着いたユヅキの気持ちなんて
お構い無しに並ぶ
制服の群れはバスの入口へ次々に
吸い込まれて行く。
たちまち車内は同じ制服を着た
中学生と高校生でぎゅうぎゅう詰めになった。
それにしても、
一般の乗客の姿が一人も見えない。
バスの利用者達はこの状況を知っていて
この時間の利用を避けているのかも
しれない。まるで学校の貸切バスだ。
あっという間に
着なれない制服を着たユヅキは
不穏な空気に呑まれる。
そんなユヅキに御構い無しに
バスはクラクションと共に発車した。
混み合った車内で
背の高い男の子のバックパックが
ユヅキの目の前に壁を作る。
信号でバスが停まるたび
ピンク色の花びらが風に翻弄され
フワフワと優雅に流されて行くのが
制服の群れの隙間から見える。
とても同じ世界に存在しているとは
思えない。
早くバスの外へ出たい。
人知れず溜息をついた時
顔の前で揺れている
プラスチック製のキーホルダーが
ユヅキの目に留まった。
──黒い仔犬……右目が……青い!
ユヅキ唯一の同志……
イチゴの写真が何故かそこにあった。
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