サンゴ

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「イチゴ?」 ユヅキはつい声に出していた。 同じ学校の制服を着た キーホルダーの持ち主が 驚いた顔で振り返る。 「えー?君、ダレ?見ない顔だね」 ──柔らかそうな栗毛色の髪の毛。 瞳の色もなんだか色素が薄い感じ。 ウチの母さんみたいだ……。 それが彼、山本ケイに対する ユヅキの第一印象だった。 「今日から転入する事になったの。 私……ユヅキ……青山ユヅキ。 ごめんなさい……ウチで飼ってる犬に キーホルダーの犬がソックリだったから ビックリしてつい……」 「そうなの?君の犬も黒い犬なんだ。 ウソ、右目も同じなの?」 ユヅキは慌てて何度も頷く。 車内の空気は無関心を装いつつも 二人の会話に集中しているのを ユヅキは肌で感じた。 そんな事などお構い無しに ケイは人懐っこくユヅキに話しかける。 「僕は山本ケイ。今日から高等部なんだ。 もうすぐバスが急カーブを曲がるよ。 僕の腕にしっかり捕まって」 戸惑いながらもユヅキは 遠慮がちにケイの腕に触れた。 次の瞬間バスは大きく揺れ ユヅキはよろめき バランスを自力で保てなかった。 すかさずケイがユヅキを支える。 ──心臓が締め付けられる ……心不全?……呼吸が苦しい。 いや。もしやこれが 『吊り橋効果』というものなのか? ユヅキの思考は混乱した。
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