1. reunion

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 吉川柚葉。  それが待ち人の現在の名前で、旧姓は森野という名前であるが。  とにかく、こうして居心地の悪さを感じつつ彼女を待つ事になった原因は、いつも立ち寄るコンビニで偶然、彼女と再会した事による物で、近々行われるという同窓会について、酒でも飲みながら話し合おうというのが今日の趣旨である。  恋人でも無ければ友達ですら無い。  つい先日まで、その存在すら忘れていた相手を、恋人達の聖地的な場所で、居心地の悪さを感じつつ一人待ってる理由を突き詰めれば結局。 「暇なんだろうな」  何が始まる訳でも無い。新たな女友達も必要無い。そしてそもそも、同窓会があろうが無かろうがどうでもいいのにこの矛盾ときたら…と苦笑を浮かべた入川が溜め息を漏らす中。 「入川君。待たせてゴメンね」  そう入川に声を寄越し、ふっと微笑みを浮かべる女性こそ、待ち人。吉川柚葉であり、先日コンビニでの久々の再会を果たした時のカジュアルな服装と異なり、黒を基調としたオシャレな服装に身を包んだ彼女の姿は、とても美しく輝いて見えた。 「…いや大丈夫。全然待って無いし。 んじゃ。早速行きますか」 「うんッ!」  何が始まる訳でも無い。新たな女友達も必要無い。というか…何かが始まる事など絶対あってはならない。  括りはただの元同級生同士。であれば気楽に行けばいいと自分に言い聞かせつつ入川は、思いの他美しく輝いて見える柚葉と共に、人で溢れる夜の繁華街へと向かった。  
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