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冬怪談 一話目 『ドライブ』
これは今より少々昔の出来事で、それこそ私が新入社員として働き始めた頃に遡る。
子供の頃には永遠に来ないと思っていた新社会人という立場も、いつの間にやら一月が経ち、そろそろ自分の車が必要かと思い始めていた時のこと。
私は週末を利用して車屋へと足を運んだ。
「いらっしゃいませ!」
店内に足を踏み入れた私を、近くの店員がさわやかに迎え入れる。
「あのー。車を買いに来まして・・・」
「畏まりました。どうぞこちらへお掛けください」
店員は詳しい話は腰を据えて話しましょうと、車が良く見える大きな鏡張りのテラス席に私をいざなうと、幾つかのカタログを持ち込んだ。
「めぼしい車種はすでにお決まりですか?」
「いえ、まだ、ほとんど決めていなくて・・・」
「そうですか。では、この辺りはどうですか?今、一番人気のモデルですね」
店員に勧められた車は町でよく見かけるハイブリッド式。
実用性も高く、非常に魅力的なデザインをしていたが・・・
「その・・・。実は持ち合わせが、あまり・・・」
なんと言っても高かった。
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