冬怪談 一話目 『ドライブ』

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車はローンを組んで買うのが一般的だということは知っていたが、私の給料から毎月数万円も飛び交っていては、普通に暮らしていくことすらままならないだろう。 「さようですか。では、中古車はいかがでしょうか?新車ではございませんので型番は古いものが多いですが、その分お値段は抑えられますよ。それに、当店では買取の際にメンテナンスも行っていますので、安全性も保証いたしますよ」 なるほど・・・。 車といえばピカピカの新車というイメージが先行していたが、中古車だって立派な車である。 「是非見せていただけますか?」 「もちろんです。店内のガレージに止めてありますので、そこまでご案内致します」 見栄えの良い新車は店頭で、それに劣る中古車は店内のガレージということか・・・。 私はちょっとした車屋の裏事情を垣間見たようで少しだけ浮き足立ったが、実際にガレージで車を確認してみると、そんな小さな陽気はどこかへ霧散した。 「いかがでしょうか?プレートの金額がそのままフルプライスとなりますので、だいぶ安く感じませんか?」 「ええ。安いには安いんですが・・・」 「あまりお気に召しませんか?」 「うーん。そうですね・・・」 最初に新車を見てしまったのが悪かったのかもしれない。 ガレージに止められている車はどこか不格好で私の気を引く物は無かった。 しかし・・・ 「あれ?この車・・・」     
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