第一部[プロトタイプ]

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第一部[プロトタイプ]

 大きな墜落事故だったのだ。世界中を釘付けにしたニュースの更新は暇なくシチズンウェブのホットワードを埋め、1週間後に海で見つかった子供は『奇跡の少女』と人々を滂沱させ、彼女を救うためたちまち義捐金が寄せられ、治療のため本来は新生児が入るオートクチュールに接続された。いくらアジア系で幼く見えたといえ13歳を迎えていたのだから希有な処置だ。  《オートクチュール》―――服ではない。縫製でもない。死にかけたシャンブル・サンディカルから『(ブランド)』を買い取った医療メーカーが売り出した、生まれつき致死病に冒された子供を救うための高級医療機器。生を留めるための最高手段。それぞれのマシンに技師と医師がチームでつき、子の状況に合わせてビリオンと呼ばれる超小型(ナノ)マシンを使った治療を施すという、人類2%の超裕福層にしか選択肢がない治療法。幸運な子供たちはオートクチュール・アンファン、《HU》《ウー》と呼ばれる。     
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