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もう友だちなんてできないかもしれないのに。せめて一瞬でも温もりを感じたい。この際男の子でもいい。ハグしたいと伝えると「君の見てるかたちだと隙間だらけだよ?」と小首を傾げる。
「僕らと合わせたほうがしっかりくっつけるよ」
言ってる意味がわからないけど、とにかくハグさせてもらう。
温かく、ざらりとした指先。男の子の乾いた汗の匂い。お腹に軽い圧迫、腕が回された所だけ熱が伝わる背中。誰かに触ってわかるのは、私の感触だ。
噛みしめていると「ほら、隙間だらけだ」と少年が不満がる。
「君のかたちはさ、くっつきにくいんだよ。背中とかがら空きだろ」
……それは普通じゃないだろうか。だから回された腕がうれしいんじゃないか。
「ねえ、僕らの神経、重ねてみない? そしたらわかるよ。こんなんじゃないから」
首肯と同時にhackされる。視覚、触覚、重力設定、不安を掻き立てる喪失感と同時に拡張する『私』。
「ほら、『抱きしめて』ごらん!」
音声信号に命じられて『腕』を、を、絡まる―――圧迫、息ができない、息? 呼吸なんて、全身……全身とは? 腕、どこ、動かして、るの? 溺れているような―――ううん、私は溺れたことない。あの時はもがく力なく水と空気の狭間を浮沈して、今も薬剤と素材とビリオンの溶液に揺らめきながら中外から復元されてる最中で。
『あああああああああああ』
なのに溶ける。水になる、
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