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溶けてしまう!
「すごい事故に遭ったんだね、痛熱くてびっくりした。落ち着いて、『僕』との境界線までが『君』だよ」
彼が私を取り巻いた。『腕』じゃ無い。足が絡まるのとも違う。隙間が無い。軟体生物のようにぴたりとくっついている。全身ぴったりと。全身? 背中は?
「僕らは自分の形を認識する前にこっちにくるから、みんな軟らかいんだ。というか、形を認識してから入ると君みたいになるんだね。ね、あの形よりこっちの方がぴったりするだろ」
境界線は気を緩めるとすぐ曖昧になって彼が私に染み込んでくる。
これが自我か。境界線を保ちながら世界を意識する。私が作っていた海も曖昧になり波にさらわれると私と彼も海になる。漂う。海と混ざらないようそちらの境界に意識を向ける。
「ねえ、ちゃんと助けてあげるからさ、ね?」
彼の声がいたずらを含んで―――侵攻してきた。境界線を侵されて私が冒される。抗えず、悲鳴は『声』にならず、私は彼と混ざった。それだけでは飽きたらず、彼は海とも混ざり始めた。拡張して薄まる自我はどんどん分解されて私の空間が崩壊した。
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