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謎の荷物
思いがけない人物から荷物が届いたのは、前日から続く雨のおかげで残暑がいくぶん和らいだ九月七日の夜だった。
送り主の名は黒崎悠次。美大の同級生だが、卒業後は一、二度葉書のやりとりをしただけで、すでに二十年以上顔を合わせていなかった。
旧友とは言え完全に没交渉の状態だったので、インタホンで宅配便の配達員と言葉を交わしていた妻から送り主の姓だけを聞かされても、まさか彼からだとは思い当たらなくて、私はただ首を傾げるばかりだった。
「黒崎ねえ……」
「心当たりがないの?」
「さっぱり」
「おかしいわね、確かにあなた宛だって」
「荷物を見ればはっきりするさ。いいよ、俺が出る」
食器の片づけの途中だった妻にそう声をかけて、私はリビングを出て玄関口に向かった。毎晩のことだが、高一と中二の娘達は、食事を終えるが早いかめいめいの部屋に引き上げている。夕食の間にたまったメールへの返信は、他の何よりも優先されるべきなのだ。
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