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赤いトサカに白い羽毛。
今日も二本足で地面を踏みしめ、仲間と共に朝の訪れを伝える。
「コケコッコ~~~~」
私はニワトリ。
人間に飼われる家畜の身ではあるが、それなりに充実した日々を過ごしている。
決まった時刻に与えられるエサ、適度な運動を取り入れた健康管理。
限定された空間内での生活ではあるが、私に不満があろう筈もない。
こうして整備された環境下で生涯を送る事に何の違和感もない私であるが、ふと上空から聞こえるさえずりに、意識を奪われる。
青い空を、翼いっぱいはためかせて飛んでゆく小鳥の姿。
その自由に思うがまま飛び回る姿を眺める私は、最近ある種の違和感を抱く様になっていた。
今の環境に不満はない。
が、時々考えるのだ。
もしも、私にも大空を舞えるだけの翼があるならば、どんな生き方をしていたのか。
私はこの環境しか知らない。
世界、なるものがどの様な成り立ちであるのかなど、まるで知る術もない。
私が見知らぬ膨大な知識やら体験を、あの小鳥らは毎日......そう思うと、私は......
......もしも、私にも大空を舞えるだけの翼があるならば、どうするだろう。
力いっぱい翼をはためかせて、大空を飛び回り、世界なるものを見聞するのだろうか。
それは一体、どんな生き方なのだろう。
私のしがない生活からは、想像がつかないスケール。
果たして一度だけでも、私にそんな機会が訪れるか..................
そんな感情に苛まれる私を傍目に、同じ仲間が「シュッカ」なるもののために、この環境から何処かへと場所を移される作業が始まる。
よほど居心地がよい場所であるのか、ここを出て行く仲間達は二度と戻ってくる事はない。
そこは大空の憧れに匹敵する場所であるのか。
そんな思いにとらわれつつ、私は今日も鳴き声をあげる。
私はニワトリ。
大空と「シュッカ」に特別な思いを抱く、家畜である。
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