童貞を捨てた、あの日の空

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童貞を捨てた、あの日の空

毎年夏になると決まってあの高校2年だった頃の夏休みの出来事を思い出す。 その思い出と共に、同時に目に浮かぶのが、実家の自分の部屋にあったカラフルなレースカーテンだった。それは姉が大学に進学する際に、姉の部屋と一緒にお下がりで譲り受けたもので、正直男子の自分にとってはそれが嫌であったが、取り替える手間と気に入らない気持ちを比べたら、まあこのままでいいか、というか感じでそのまま使っていた。 その夏は、ただひたすらまったりと心地の良い夏だった。その夏、僕は1つ年上の幼なじみと付き合い始めていた。 その日、家の者は皆、夏の家族旅行に行っていた。当時高校生だった僕は、そんなものに行っても楽しくないと、ひとり家に残ることにした。家族からは非国民のような意識を投げかけられているように思えたが、当然何よりも、初めてできた彼女とイチャイチャしたかったのだ。 その日、夏休みのいつもより遅く起きた時間は、すでに蒸し暑かったけれど、とりあえず先ずは、扇風機を回して風の出る方に「あー」と言ってみた。     
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