童貞を捨てた、あの日の空

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と思い、少し冷静さを取り戻すために一瞬部屋の中を眺めた。カラフルなレースのカーテンから夏の光が入り込んでいた。その色とりどりの丸い光の模様が、部屋中を照らし出すかのように感じた。彼女の体の心地の良い感触を感じているとそんな気がした。 その後、僕と彼女はお互いの初めてを経験した。コンドームを付ける心の余裕はなく、僕は彼女の中で絶頂した。 ベッドには彼女の処女膜が破れたことを示す赤いシミが付いていた。 僕と彼女はこれ以上ない程にお互いの体を強く密着させて、何度もキスをした。 次の日、僕は夏期講習の体験入学のために自転車に乗って駅の方へ向かっていた。彼女が夏期講習に通っていて、昨日のベッドの中で、一緒にいる時間を少しでも増やそうと、彼女から夏期講習に来ないかと提案があったのだ。 昨日、道の真ん中にいた猫は当然いなかった。心地の良い風が海から吹いてきて、僕は少しだけ自転車を止めて、あの三毛猫が見ていた方を眺めた。けれどもその景色はいつもと変わらず、特にこれといったものは感じられなかった。そしてなんとなく空を見上げた。見上げた空についても僕は何も感じなかった。僕は空を見上げても何も感じないことに心地良さを感じた。ただまったりとした心地の良い時間が流れている。頑張ることも希望を抱くこともない、この夏の空に僕は感謝した。     
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