童貞を捨てた、あの日の空

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あれは確か7月のまだ海開きをしていない頃の休日のことだったと思う。幼なじみの彼女から突然ケータイに電話がかかってきた。近所に少しだけ町が整備した海辺のウッドデッキとベンチがある場所があったのだが、そこで待ち合わせね、と言われた。よくわからなかったが、多分彼女は誰かに恋愛感情を抱いていて、男子として聞きやすい自分に恋愛相談でもするのだろう、と思った。いや、だとすれば若干迷惑ではないかと思いつつ、まあ良いアドバイスはできないかもしれないけれども、相談にのるくらいはいいか、面白そうでもあるし、と思いながら待ち合わせ場所へ歩いて向かった。 そのベンチには彼女はいなかった。待ち合わせ場所を自分が勘違いしている可能性について思いを巡らせたが、しばらく待つことにした。 10分くらいして彼女は現れた。「待った?」と声をかけて来たが、待ったに決まってるし、普通待たせてごめんね、というところなのではないか、と思ったが、「まあ、少し待ったよ。」と答えた。これから一体どんな話をされるのか分からなかったので、あまり彼女の気持ちを刺激しないようにしておいた。 彼女は僕の隣に黙って座った。彼女は黙って下を向いている。僕はそんな彼女を不思議に思い、じっと見ていた。具合でも悪いの?、と聞いたけれど、彼女は何も答えずに下を向いたまま微動だにしなかった。仕方がないので、彼女が何かをしゃべしたくなるのを待つことにした。 しばらくして、彼女が下を向いたまま口を開いた。 「あのね、私、君のことが好きなの。」     
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