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ゆっくりとした動作で身体を起こすと、想像以上に重い身体に驚いた。
こんなにも疲れていたのか。気を張っていたときには気が付かなかった。
ワンルームなので玄関まではすぐなのだけれど、重い身体のせいで妙に遠くに感じる。ドアロックの解除に手を伸ばすのさえ億劫だ。
――――カチャッ
ドアロックの解除と同時にすぐドアが開いた。明かりを背にして浅見が立っている。
「お邪魔します。……どうしたんですか、こんなに暗くして。寝ていたんですか?」
「……うん」
「……電気を点けても構いませんか?」
「うん」
浅見が壁を探って、電気のスイッチを入れた。
すぐに目が合う。緊張から解き放たれたはずなのに、何だかまた胸が速いテンポで脈打ち始めた。
こんな明るいところで、こんなに近くで浅見に見つめられると、やっぱりペースを乱される。
決してそらしてはくれない、深い茶色の瞳。
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