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「……中に入ってもいいですか?」 「ああ」  視線をそらせるのでホッとした。浅見が靴を脱いで俺の後に続く。  8畳の部屋は、敷いてある布団でほぼいっぱいで、他には端の方に小さなテレビと小さな座卓、そして1人用の座椅子があるくらいである。客人に出す座布団なんて物は当然ない。自然と2人で布団の上に横並びであぐらをかいて座るような形になった。 「……綺麗にしてますね」 「狭いから家具が少ないだけだよ」 「そうなのかな……ところで、スーツのまま寝ていたんですか?」 「あ……そうだった」 「シワになっちゃいますね」 「だな。近いうちクリーニングに出してくる」  視線を合わさぬままの会話は、なかなか核心を突かない。俺から核心に迫ってもいいのだけれど、まだ切り出すタイミングじゃない気がした。
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