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「……でも、僕は気付いてしまったから」
「……何を?」
「頼さんが、僕を嫌いになれないこと」
俺は目を見開いた。
浅見は、今度は寂しそうに微笑んでいる。いつもの機械のごとく完璧で付け入る隙のない人を虜にする笑みを浮かべている訳ではなくて、俺の前では一つ一つ違った笑顔を見せる。それがまた、俺の心を揺さぶるのだ。
「……僕の自惚れでしょうか?」
そうだ。俺の前での浅見の笑顔には、いつもどこか悲哀感が漂う。
悲しそうで、寂しそうで、つらそうで、苦しそうで……何だか1人で全ての負の感情を背負っているように見えるから――――
だから、嫌いになれないんじゃないか。
だけどそれと好きになるのは別問題だ。
「……嫌いになれないのと好きとは違う」
「頼さん……やっぱり僕のこと、嫌わないでいてくれたんですね」
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