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「……浅見!!」  俺の大きな声に、浅見が驚いたように振り向いた。  俺自身も驚いている。このまま浅見を帰せば何もかも終わるのに、わざわざ呼び止めてしまったことに。 「……お互い理解できるまで話し合うって言ったじゃねぇか。“死ぬまで、理解してもらえるよう努力します”とか、そんなことも言ってたじゃねぇか。何だよ、今の状況。俺は理解できねぇよ」  何だろう、一方的な浅見の言い分にモヤモヤしている。きっと浅見の言うことは正しいのだし、俺にとっては悪いことは何一つないのだけれど。  浅見は困ったように少し眉尻を下げた。 「……このまま話し合ってもダメだとわかったんですよ」 「どういう……」 「このままじゃ、死んでも平行線のままだから」  浅見は断定的にそう言い切った。そしてまた俺に背中を向ける。 「……浅見っ!!」  俺は立ち上がり小走りで、去り行くその肩を掴んでいた。このままじゃ、何だか不完全燃焼な気がして。お互いもっと何か話せるような、そんな気がしていた。  浅見がぴたりと立ち止まる。けれど、振り向きはしない。 「……あんなことをした僕が言うのもなんですが、明日から上司、部下としてよろしくお願いします」
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