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「結城部長……」
『おお。ごめんな、夕飯時に』
「いいえ、食べてなかったので大丈夫です」
『……食べてない? 何だ、やっぱりまだ体調悪いのか?』
「あ、いや……そんなこともないっすけど、疲れてずっと寝てたから……」
『そうか。悪いな、起こしちまって』
「……あ、いや起きてましたよ!! ちょうど起きたところで……」
どこまでも優しく気を遣ってくれる結城部長に涙が出そうになる。本当は嘘なんて吐きたくないけど、心配は掛けたくない。
『…………柏倉は嘘が下手だな』
結城部長が微かに笑っているような気がした。
『心配で電話したんだ。今日は調子が悪そうだったから。案の定、まだ調子悪そうだな』
「……結城部長……」
『月曜から俺もそっちに行くから、悩みがあったら何でも言えよ。俺は……おまえの元相棒だからな』
「“元”って……」
『月曜からはまた相棒として頼む。だから今日と土日はゆっくり休めよ』
結城部長はどこまでも優しくて。優しくて、胸が張り裂けそうなくらい苦しい。
このまま“あなたが好きです”と言えたらどれほど楽になるかな? だけど臆病な俺には絶対言えない。この優しくてあたたかい“元相棒”という関係性を守りたいから。
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