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その後、俺は結城部長に何度もお礼を言ってから電話を切った。はやる気持ちが抑えきれなかった。
座卓の上にあったのは、何かが入った大きめのコンビニの袋。俺が買った物ではない。それならば――――
急いで袋の中身を確かめる。
「……何だよ、これ……」
中には、レンジで温めるだけのうどんやそば、サンドイッチ、スポーツドリンクなどがぎっちり入っていた。
別に好きな物でも何でもない。俺は麺類ならガッツリ系のラーメンが好きだし、パンよりおにぎり派。それに、飲み物はコーヒーか炭酸飲料がいい。
だけど――――今の俺にはこの袋に入った物になぜだかやたらと涙腺が刺激されている。
割り箸に“身体の具合が良くなったら食べてください。本当にごめんなさい”と書かれた付箋紙が貼られていた。
「……浅見」
アイツは、馬鹿だ。
なぜ、こういう何気ない優しさを目の前で見せてくれないのか。
話し合いたいとかそんなこと言ってたけど、きっとそんなのは口実で。
俺の体調を心配してたけど、心配するだけじゃ俺が強がって拒否するってわかってたから――――
ああ、どうしてあんなハイスペックな男がこんな不器用なやり方をするのか。
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