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 ――――俺たちは、何も知らないんだ。  食べ物の好みも、コミュニケーションの取り方も、お互いの本当の性格も。そう、俺たちは何も知らないまま。  その前に身体を重ねてしまったから、こんなに拗れてる。  本当の浅見って――――?  またスマホの着信履歴を見つめる。5年前から登録されていた、つい最近まで忘れていた名前。  俺の知っている5年前の浅見は、頭が良くて、綺麗で、精神的に強くて、だけどどこか冷めてて。  今は美しさに男らしさが加わった上に、好青年の仮面を被るのが上手くなった。そしてやっぱりどこか冷めている。俺を抱いたときの激しい熱情と、時折見せる冷めてる寂しげな表情との差が大きい。俺にはよくわからない、得体の知れない存在。だから少しだけ、怖い。  そんな男だから、まさかこんなことをしてくるとは思わなかった。  これも計算なのか……? 信じられなくてそんなことを思ったりもするけれど、たぶん違うんだろう。  浅見もきっと、戸惑っている。何もかも手に入れてきた男だからこそ、もがき逃げていく俺という存在に。 「……何で、何で俺なの……」  思わずそう呟いて、俺は袋に入っていたスポーツドリンクを半ばやけくそに飲み干した。
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