4/23

2626人が本棚に入れています
本棚に追加
/292ページ
 俺は父を飾る道具として育てられたのだと思う。  愛情は感じなかった訳ではないけれど、両親はとにかく教育熱心でどこかわざとらしい気がした。こういうのが最高の教育です、って押し付けがましいっていうかさ。我が子だから可愛がられてると言うより、優秀な子、お利口な子だから可愛がられてるみたいな?  常に優秀で清廉潔白で――――俺は父の思い通りに育った。  よくテレビや新聞の取材に家族総出で対応したっけ。誰もが憧れる、幸せな理想の家族を演じさせられたし、父の顔立ちに似た俺はいいように使われたな。  確かに、傍から見たら嫌味なくらい理想的だったかもしれない。優秀な父とお金持ちの母がいて、良いとこ取りした子どもの俺がいて。だけど、俺は学校で苛められたし、妙に冷めて達観したような可愛いげのない性格になってしまった。みんな俺に何でも持ってて羨ましいって言うけどさ、全然幸せでも理想的でもないじゃんか。  でもね、今になって思うとあの頃は幸せだったんだなって思うよ。強がって気を張ってるところで頼さんに出会えて、純粋な恋心を知ることもできたしさ。  2年前に父の不倫が週刊誌にすっぱ抜かれて、俺の人生は変わってしまった。
/292ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2626人が本棚に入れています
本棚に追加